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トトトの歌 「トトトの歌」という曲のことについて少し書いてみたいと思います. 「トトトの歌」というのはこのような曲です.「トトトの歌」という曲名はご存知なくても,曲は聴いたことがあるという方も多いのではないかと思います. 私も,曲自体は随分前から知っていましたが,それが「トトトの歌」という名前であることを知ったのは「猫ふんじゃった」のことを調べ始めてからです. 「四方山話」では「猫ふんじゃった」(蚤のワルツ)のことを色々書いていますが,「猫ふんじゃった」のことを調べていると,この「トトトの歌」が色々なところで関わってきます. 「蚤のワルツ」の「追記」で,「猫ふんじゃった」のデンマークでの呼び名とされている“Prinsesse Toben”が実は「トトトの歌」だったことを書きました.その他にも,たとえば「猫ふんじゃった」のフランスでの呼び名についても「トトトの歌」が関係していたりします. 日本では,「『猫ふんじゃった』はフランスでは『カツレツ』と呼ばれている.それは,弾くときの様子がフォークとナイフでカツレツを切る動作に似ているから.」というようなことが,まことしやかに書いてある本やウェブ ページがあります. 「まことしやかに」と書いたのは,私はその話は多分誤りだと考えているからなのですが,しかし,それが誤りであると決めつけるだけの充分な客観的証拠を,残念ながら今のところ私は持っていません. なので,このことについてはここではこれ以上書きませんが,そのような話が広まった原因にも「トトトの歌」が関係していると私は考えています. そのように,「猫ふんじゃった」のことを調べていると必然的に,「トトトの歌」についても色々調べることになりました. ここでは「猫ふんじゃった」のことはちょっと置いておいて,「トトトの歌」のことを書きます. 「トトトの歌」は原題を“The Celebrated Chop Waltz”と言います.“Arthur de Lulli”によって作曲され,1877年にイギリスで出版されたものだそうです.ただし,“Arthur de Lulli”はペンネームで,本名は“Euphemia Allen”と言うそうです.この曲は英語では通称“Chopsticks”と呼ばれています. 英語では(少なくともイギリスでは)「猫ふんじゃった」も“Chopsticks”と呼ばれていますが,“Chopsticks”と言えば(少なくともアメリカでは)「猫ふんじゃった」よりも「トトトの歌」のことを指している場合の方が多いようです. 「トトトの歌」という題名は,作家・作詞家の阪田寛夫さんが付けたもののようです.阪田さんはこの曲に次のような歌詞を付けていますので,曲名も多分阪田さんが付けたものではないかと思います. トトト トトト トトト トテモ「トトトの歌」はピアノの初心者がよく弾く簡単な曲です.日本では,初心者が弾くピアノ曲と言えば「猫ふんじゃった」がその筆頭だと思いますが,アメリカではどうも「トトトの歌」が定番のようです.アメリカの映画やテレビ番組で,ピアノを習っていないような人がピアノを弾くシーンがあると,「トトトの歌」を弾くことが多いようです. アメリカの映画/テレビ番組で「トトトの歌」を弾くシーンが出てくるものをいくつかご紹介します. 日本で「猫ふんじゃった」が出てくる映画/テレビ番組を挙げたら切りがないだろうと思いますが,それと同じように,アメリカで「トトトの歌」が出てくる映画/テレビ番組を探すと,多分切りがなくなるのではないでしょうか. ◆ 我等の生涯の最良の年(原題: The Best Years of Our Lives) ホーマー(ハロルド・ラッセル)とブッチ(ホーギー・カーマイケル)が連弾します.◆ 七年目の浮気(原題: The Seven Year Itch) リチャード(トム・イーウェル)と美女(マリリン・モンロー)が連弾します.◆ 愛情物語(原題: The Eddy Duchin Story) 第二次大戦中,戦地の壊れた建物の中にあったピアノで,エディ(タイロン・パワー)が少年と連弾します.◆ ビッグ(原題: Big) おもちゃ屋にある大きな鍵盤(人が上に乗ると音が出る)で,ジョッシュ(トム・ハンクス)がおもちゃ会社の社長(ロバート・ロギア)と連弾します.◆ 蝋人形の館(原題: House of Wax) 蝋人形館にあったピアノでウェイド(ジャレッド・パダレッキ)が弾きます.◆ マゴリアムおじさんの不思議なおもちゃ屋(原題: Mr. Magorium's Wonder Emporium) モリー(ナタリー・ポートマン)が作曲に行き詰まって,「トトトの歌」をちょっとだけ弾きます.◆ ミュータント・タートルズ(原題: Teenage Mutant Ninja Turtles)(2014年版) まるで猫が箸(chopsticks)でキーボードを弾いているかのような映像がビデオ モニタに映り,バックに「トトトの歌」が流れます.◆ セサミ ストリート(原題: Sesame Street) テレビ番組「セサミ ストリート」で Two-headed monster(双頭のモンスター)が弾きます(1 匹だけど連弾?).◆ かわいい魔女ジニー(原題: I Dream of Jeannie) テレビ番組「かわいい魔女ジニー」の「魔法のピアノ」(原題: Jeannie at the Piano)というエピソードで,トニー(ラリー・ハグマン)が弾きます.◆ 刑事コロンボ(原題: Columbo) テレビ番組「刑事コロンボ」の「黒のエチュード」(原題: Etude in Black)というエピソードで,コロンボ(ピーター・フォーク)がコンサート会場で容疑者を待っている間に暇つぶし(?)に弾きます. 逆に,アメリカの映画/テレビ番組で,「猫ふんじゃった」を弾くシーンがあるものをご存知の方がいらっしゃいましたら,教えていただけると嬉しいです. 追記 日本では,なぜか「トトトの歌」と「ハート アンド ソウル」を混同している方がいらっしゃるようなので,「ハート アンド ソウル」について少し書いておきます. 「ハート アンド ソウル」はこのような曲です. Heart and Soul/Hoagy Carmichael“Hoagy Carmichael”によって作曲されたもので,最初に演奏されたのは 1938年のようです. アメリカでは,このような簡単なアレンジにして,ピアノの初心者がよく弾くようです. “Chopsticks”という呼び名は,人差し指だけで弾けるような簡単なピアノ曲の総称のようです.「ハート アンド ソウル」も“Chopsticks”と呼ばれることがあるので,もしかすると,それが混同の原因かも知れません. 追記 アメリカの“Office Ninja”というテレビ ドラマで「猫ふんじゃった」が使われているのが見つかりました.弾いているシーンがあるのではなく,エンディングのテーマとして「猫ふんじゃった」の歌が使われています. ただし,歌っているのは“Laurel Sanders”という方ですが,歌詞は日本語です.阪田寛夫さん作詞のものです.(「猫ふんじゃった」の日本語の歌詞としては,多分一番ポピュラーなものだと思います.) Neko Funjatta/作曲者不詳(Laurel Sanders 編曲),阪田寛夫 作詞追記 「お箸弾き・こぶし弾き・チョップ弾き」でも「トトトの歌」のことを書いていますので,よろしければそちらもご覧ください. |