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● 金管楽器で同時に三つの音を出す方法

私は高校生のとき吹奏楽部でチューバを,大学生のときはオーケストラ サークルでコントラバスをやっていました.
オーケストラのときのコントラバスの後輩で,高校生のときはコントラバスの他に何か金管楽器(正確には覚えていないのですが,チューバだったかユーファニアムだったかと聞いたように思う)もやっていた奴がいました.

彼があるとき戯れにホルン(だったと思う)を吹いていたのですが,二重音,つまり同時に二つの音を出すと言って,実際にやって見せました.
彼はさらに三重音も出せると言って,短い時間でしたが確かに同時に三つ音を出しました.

私がどうやるのか尋ねると,二重音は普通に吹くのと同時に声を出しているのだと答えました.もちろん吹いている音と倍音関係にある音でないと共鳴はしないのですが,たとえばドの音を吹きながらミの音を声で出すというようなことです.(この説明は厳密性を欠いていますが,金管楽器をやっている人なら意味は解ってもらえるでしょう.)
では三重音はというと,二重音に加えてさらに「のどひこを振るわせる」のだと言っていました.

後日ちょっとチューバを吹いたときにそれを思い出し,試しにやってみました.
やってみると二重音は割と簡単にできました.馴れないと声の方の音程を取るのがちょっと難しいですが...
意外なことに,生の音だと吹く音(唇を振動させる音)と声は全然違う音ですが,管に共鳴させた音はかなり似た音質になり,まるで二本のチューバで演奏しているように聞こえました.

さあ次は三重音に挑戦 … したいところですが,「のどひこを振るわせる」ってどうやるんだ???
しかも普通に音を出し(唇を振動させる),声も出し(声帯を振動させる),さらにのどひこを振るわせるとは... とても人間業とは思えない...
でも確かにその後輩が,ほんの一瞬ではありましたが三重音を出すのを私は聞きました.
まあ確かに彼は滅茶苦茶器用な人間でした.私も結構器用な方だと自分では思っているのですが,彼の器用さにはかないませんでした.

追記

ウェーバーのホルン小協奏曲のカデンツァに,重音奏法で演奏する箇所があります.