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● 蚤のワルツ 6

「蚤のワルツ 4」「蚤のワルツ 5」で“F.Loh”作曲というのがパロディであることを書きましたが,これはそのオマケの話です.
バウマン氏の本には画や写真がいくつか載っています.この本を詳しく調べるのはやめましたが,画や写真のところだけちょっと調べてみたら,ひとつ面白いことが判ったのでそれを書きます.

この本に古い紙幣の画が載っています.
Notgeld
Atlantis Musikbuch
「Der Komponist Ferdinand Loh und sein opus magnum: Der Flohwalzer」より引用
第一次大戦中や戦後のインフレのときに,不足する通貨を補うためにドイツの地方自治体などで発行された緊急通貨(Notgeld)というもののうちのひとつです.この画のものは,ゾンダーズハウゼン(Sondershausen)という町で発行された 50 ペニヒ(1 マルク = 100 ペニヒ)の緊急通貨です.
古いコイン等を販売しているサイトで実物の写真を見ることができましたが,下側にある肖像が本の画と違っていました.バウマン氏がパロディで書き換えたのか,実際に肖像が違うものが二種類(またはそれ以上)発行されていたのかは判りません.写真で見たものは 1921年発行となっていました.

「ローのコンサート ホール」(Konzerthalle im Loh)がデザインされています.ゾンダーズハウゼンには「ロー・オーケストラ ゾンダーズハウゼン」(Loh-Orchester Sondershausen)というオーケストラもあります.
このローのコンサート ホールやロー・オーケストラ ゾンダーズハウゼンの「ロー」(Loh)が,“Ferdinand Loh”に由来するというようなことをこの本では書いているようですが,もちろんそれは嘘です.

ロー・オーケストラ ゾンダーズハウゼンのウェブ ページに「ロー」の由来の説明があります.
この町にはカシワの森があって,その木の樹皮(Lohe)を加工する場所のことをローと呼ぶようです.樹皮は皮をなめすときに使うそうです.
私の訳なので間違っているところがあるかも知れませんが,少なくとも“Ferdinand Loh”とは何の関係もありません.

ちなみに,指揮者の増田宏昭さんという方が 2002年から,ロー・オーケストラ ゾンダーズハウゼンの音楽総監督をされているそうです.(追記: 2008年に退任されたそうです.)

追記

その後,肖像が違う紙幣の写真をいくつか見つけることができました.その中には,この本の画と同じものもありました.
他の箇所は同じで肖像だけを差し替えたものが何種類も発行されていたようです.